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Interview

取材動画

和歌山県伊都郡 株式会社やまやま【取組事例インタビュー】

〈NorthSDGsMediaでは北海道札幌市の企業様のSDGsに関する取り組み事例を紹介しています。〉

【SDGs取組事例】株式会社やまやま【サービス・販売】

 

「優しいママでいたいのについつい怒ってしまう」「子どもには元気いっぱいでいてほしいけど、5分でいいから静かにしてほしい」…
このような葛藤や育児ストレスを解決し、子どもにとっていい社会をつくるために立ち上がった3児のママがいます。
実体験から生まれたソーシャルグッドな取り組みが、全国の子育てママたちから共感を呼んでいます。


 

―現在の活動に至るまでの経歴を教えてください。

猪原:大学を卒業後はWEBマーケティングの会社に10年間勤め、その間に出産を3回経験しました。
私は生まれも育ちも大阪なのですが、2018年に三男を産んだ翌月に、和歌山県かつらぎ町という過疎化が進んだフルーツ王国と呼ばれている町に移住しました。

なぜ移住したかというと、大阪市内で育児をしながら仕事をするなかで産後うつを経験し、夫の仕事の都合でこの町を訪れたときに豊かな自然を見て、環境を変えるのもいいなと思えたからです。

移住をしてみると今まで「こういうものがあったらもっと笑顔で子育てできるのにな」「こういう場所があったら救われるのにな」と思っていたものがここで捨てられている廃棄フルーツや耕作放棄地を見たときにちょうど使える!と思えました。

移住した翌年、10年勤めたWEBマーケティング会社を辞めて、アップサイクル事業を立ち上げました。

廃棄される柿

廃棄される柿

 

ー株式会社やまやまの事業内容を教えてください

猪原:メインの事業は2つありまして、1つは「無添加こどもグミぃ〜。」という、大阪市立大学と共同開発したグミのような食感の無添加ドライフルーツをサブスクモデルで販売しています。
小規模農家さんからフルーツを買い取って、地域の5箇所の障がい者福祉施設で加工から発送を行っています。

無添加こどもグミぃ〜

無添加こどもグミぃ〜。

 

現在は東京の有楽町マルイの6F常設店舗「エシカルな暮らし」でも販売しています。
和歌山県からおやつストレスに悩む全国のお母さんに無添加おやつを販売することで、子供たちにはご機嫌ママを届けるサービスを提供しており、現在全国にたくさんのサブスク会員様がおられます。

もう1つの事業は、家の横にある800坪の農作放棄地を2年半かけて開拓し、「くつろぎたいのも山々」という、観光農園とキャンプ場が合体したような子連れ限定の自然体験施設を2022年1月26日にオープンしました。

くつろぎたいのも山々

くつろぎたいのも山々

 

―“コネなし”の状態からスタートした事業とのことでしたが、どのようにここまで人脈を広げていったのでしょうか?

猪原:とにかく色々な人にプレンゼンをしました。プレゼンブックというものを作って、ここに自分のミッションや自分がつくりたいと考えている世界をイメージ写真とともに書いています。

プレゼンブック

実際に使用したプレゼンブック

これを使って100人くらいにプレゼンしました。ママ友をはじめ、役場に持っていって町長の前でもプレゼンしました。

そうすると、はじめはママ友がすごく応援してくれて、農家さんを紹介してくれたり、耕作放棄地(現在の観光農園の場所)の土地の持ち主を紹介してくれたり。
そうして一人ひとり応援してくれる人が増えていきました。

 

―本当にひたすら一人ひとりつながりを広げていったんですね。
改めてこのような事業を立ち上げた理由や想いを教えてください。

猪原:「無添加こどもグミぃ〜。」も、「くつろぎたいのも山々」も、全てが私の原体験から始まっています。
私が育児をするなかで、「こんな場所があったらいいのに」「こんなものがあったら嬉しいのに」と思ったことを検索してみても見つからない。
だから「私が作るしかない」と思って動き始めました。

「無添加こどもグミぃ〜。」は、長男が2歳のときのおやつストレスがきっかけで作ったものです。
子どもから「おやつくれくれ!」と騒がれると、本当はあげたくない添加物まみれのおやつを、口止めするかのようにあげてしまいます。
何より、おやつストレスがきっかけで子どもを不用意に怒ってしまうことがとても嫌でした。
子どもって、手がかけられないくらい忙しいときに限って「おやつ食べたい」「グミ食べたい」って言ってくるんですよ。

市販の無添加おやつは、無添加と表示されていても9割が添加物まみれですし、1割の本当の無添加おやつは茶色くて甘くなく子どもの好みに会いません。

「どうしてカラフルで甘くて小さくてグミみたいな食感で、無添加のおやつってないんだろう?」と思って、自分でそのようなおやつを作ろうと思いました。

無添加こどもグミぃ〜

カラフル・甘い・小さい・グミのような食感・無添加、すべての要素を満たしたおやつ

 

「くつろぎたいのも山々」をつくったのも、同様に育児ストレスがきっかけです。
私の3兄弟はやんちゃすぎるということもあって、どこに連れて行っても常に他のお客さんに気を遣わないといけないんですよね。「すみません、すみません」と何度も謝っていました。

また、大阪市内という比較的都会に住んでいたので生き物も本当に少ないのですが、子どもがダンゴムシとアリを袋に集めてマンションでリリースするという遊びをしていたんです。
そういうのを見ていたら「自然体験施設に連れて行ってあげたい!」と思って、週末になったらいちご狩りや椎茸狩りなど自然豊かな場所に連れて行っていました。

でもやっぱり本当につらいんですよ。おむつ替えできる場所がない、おっぱいをあげられる場所もないから駐車場まで戻らないといけない。ゆっくりコーヒーを飲むこともできないし、BBQでゆっくり食べれたこともない。
もう本当に嫌で、二度とこういう経験をしたくないって思ったんですよね。

移住してから自然体験のなかで子どもがすごく元気に遊んでいるのを見て、「私だったらお母さんにそういう思いを一切させない体験施設をつくれる」と思いました。
つまり、育児のあらゆるストレスを解決しようとする中で、ちょうど捨てられている地域資源を活用してサービスを作り上げていったという感じなんです。

くつろぎたいのも山々設備

おむつ専用ゴミ箱・授乳室・シャワー室・子ども用トイレ・ユニバーサルトイレなどを完備

 

―お母さんや子どもだけでなく、いろいろなところにメリットがある取り組みですよね。

猪原:本当にそうで、今は農家さんから毎月約240kgの廃棄フルーツを買い取っています。
たとえば柿農家さんだったら、ひとつの枝に1個しか実をつけないのに、少し日焼けしてしまったり傷があったら捨てざるを得ないんですよね。農家さんはそれが本当に心苦しいんですよ。
それが子どものおやつになるということはもちろん、毎月安定した収入の柱になることも喜んでくださってます。

農家から柿を買い取る猪原様

農家から柿を買い取る猪原様

障がい者福祉施設では、障がいの程度が人によってバラバラなので、みんなで一緒に一つの仕事をすることって結構難しいんですけど、このおやつ作りではそれぞれ切る・洗う・並べるなど役割分担をすることで、みんなが一緒に参加できます。

あとはメディアの取材がすごく多いので、自分の仕事がテレビに出ていることを利用者さんも保護者さんもすごく喜んでくれてやりがいを持ってくださっています。

やはり毎月安定したお仕事や収入があるということで、農家さんにとっても福祉施設の皆さんにとってもメリットがありますよね。

 

―「子どもにとっていい社会をつくる」がミッションとなっていますが、そこにはお母さんのコンディションってとても大事なんだとお話を聞いていて思いました。
やはりお母さんの気持ちに寄り添うというところは事業の軸になっているんですね。

猪原:日本って飢餓で亡くなる子どもってほとんどいないじゃないですか。それなのに先進国のなかで幸福度がワースト2位なんですよ。
子どもが不幸なんです。それって不思議だと思うんですけど、私はそれがなぜかすごくわかってて。

自分も子育てして産後うつのつらいときに児童虐待のニュースが流れていたら全然他人事と思えないし、そういうお母さんっていっぱいいるんですよ。
子どもの寝顔を見ながら「怒りすぎてごめんね」って泣いているお母さんがいっぱいいるんです。

そんななかで、お母さんの精神的な安定だったり、ご機嫌でいられるということは、ほとんど子どもの幸福度に直結するんですよね。だから子どもにとっていい社会をつくろうと思ったときに、お母さんの育児ストレスを一つひとつ解決していくことは、一つの大きな軸として担っています。

もう一つは、やっぱり自然の力ってすごく強いということですね。
今まで生きてきて、「自然豊かな地球を子どもの代まで残さなきゃ」なんて思っていませんでした。
けど、山と山に囲まれたかつらぎ町に移住して、自然のなかで子どもたちが「カブトムシ!」「クワガタ!」と元気に遊んでいるのを見ていると、この自然豊かな社会を絶対に残さなきゃいけないって初めて思ったんです。

くつろぎたいのも山々で遊ぶ子どもたち

くつろぎたいのも山々で遊ぶ子どもたち

 

ー最後に、今後の展望を教えてください

猪原:自分が死ぬときに、本当に後悔なく「自分の人生は幸せだった」と言いたいんですよね。

そのためにプライベートと仕事を分けているんですけど、プライベートでは、子ども3人が「ママの子どもでよかった」と言えている状態だったら、私は自分の人生は幸せだったと言えます。
仕事だったら、「子どもにとっていい社会をつくる」という山を登るために、できることを全部やったって言い切れたら私の人生は幸せだったと思えます。

そのときのゴールに1mmでも近づけるように日々過ごすことが私の目標でもありますね。

 


“思っていることをしっかりアウトプットすれば現実は動いてくれる”ということを証明できたとお話しされた猪原様。
ご自身の悩みや体験が、SDGsへ貢献する効果的な取り組みへと変貌する可能性を秘めています。
無添加こどもグミぃ〜。の購入、くつろぎたいのも山々のご利用についてはHPよりご予約いただけます。

株式会社やまやま

株式会社やまやま(くつろぎたいのも山々)
代表 猪原 有紀子
和歌山県伊都郡かつらぎ町丁ノ町1526
MAIL:inoharayukiko@gmail.com
URL:https://kutsurogiyama.com/