Interview
取材動画
福岡県福岡市 一般社団法人みるみるプロジェクト【取組事例インタビュー】
〈NorthSDGsMediaでは北海道札幌市の企業様のSDGsに関する取り組み事例を紹介しています。〉
【SDGs取組事例】一般社団法人みるみるプロジェクト【教育・コンサルティング】
しかしながら、その実態はまだ世間に広く知られていません。
今回は、子どもたちの「みる力」を育てる、鈴木代表と視能訓練士の平良先生にお話を伺いました。
―一般社団法人みるみるプロジェクトの事業内容を教えてください。
鈴木:一般社団法人みるみるプロジェクトは、2020年4月に福岡市で設立いたしました。
子どもの視機能発達を妨げる弱視斜視の治療に対して、関係者が連携して取り組むというような支援事業を行っております。
また、それを治療する眼科クリニックの支援や、子ども用めがねを販売するめがね専門店に対する集客サポートなどを事業としております。
―SDGsに関する取り組みを始めたきっかけは何ですか?
鈴木:そもそもは、収益事業をやりたいと思って始めたことではなく、SDGsは設立後に知りました。
しかし、これから事業体として何かやっていくことに対して、SDGsというのは今後避けて通れないものであると痛切に考えまして、逆に今行っている事業のどこがSDGsに適合しているだろうか、と検証していきました。
そうすると、実は特に新しいことをするわけではなくて、既にプロジェクトとしてやっていることや、やりたいと思っていることがかなり当てはまる、ということに気がつきました。
―それではSDGsに関する具体的な取組を教えてください。
鈴木:まずは弱視斜視に対する早期発見早期治療の啓発事業ですね。
眼は6〜8歳頃までに発達がほぼ完了します。
「小学校上がるまでいいかな」などと考えて先延ばしにしてしまうと、勉強する、本を読む、体を動かす、といった場面で色々なことを学び取るはずが、ぼんやりとしか見えていないことによって、その期間のその子の教育水準が下がってしまうことになる、と私は理解しております。
私たちは、眼だけを治しているわけではなく、眼とともに子どもを育てることを助けているんです。
私たちが発行した「みるみる手帳」は、弱視や斜視と診断された子どもの保護者に眼科が交付する眼の管理手帳となっております。
どんな手帳かというと、保護者が眼科へ持って行き、治療経過などを書いてもらうものです。
他にも、「次は夏休みにきてね」「今度は目薬の検査があるよ」など、色々な連絡を密に記入することもできます。
この手帳が画期的なのは、眼科だけではなく、めがね屋さんにも書いてもらう手帳であるというところです。このような手帳は他にはありません。
実はこの手帳は、平良先生が個人的に作って眼科で渡していたペーパーが元になっており、たった一人の視能訓練士が、個人の努力として、お子さんのために、保護者のために作り始めたものがすべての元になったんです。
これを、“とにかく無料で眼科に配りたい”というのが全ての出発点でした。
ー手帳を利用するメリットはどんなところにありますか?
鈴木:一つは、保護者さんも「眼科やめがね屋さんへ定期的に通い、しっかり治療に取り組まなきゃいけないんだ」とモチベーション向上につながります。
たとえば、視力を記載する折れ線グラフなどもあるので、「左目が弱かったけど上がってきているから頑張ろうね」といった具合で前向きに捉えることができるかもしれません。
また、小児眼科医の先生や平良視能訓練士監修のもと、医療用の読み物としても機能しています。
特に、眼科で子どもの診断結果を受け、保護者の気が動転しているときに口頭説明をされても、「そもそも弱視とは何か?」という理解から難しくなってしまいます。
治療の必要性などを後からでも納得してほしいということで、そういった医療情報についても丁寧にイラスト入りで載せております。
視能訓練士の能力・職域拡大の取り組みも行っております。
平良先生が持っているのは国家資格の視能訓練士という職業ですが、これは国家資格の中で最も知名度が低いのではないかといわれています。
ますます目を酷使すると言われている21世紀、視能訓練士さんの役割は必ず大きくなっていくはずなのに、なぜ有名じゃないか。
一つは、賃金が安いんです。
視能訓練士の80%以上は女性が占めておりますが、当然女性と男性で賃金の差はあっちゃいけないですよね。ですが現実はそういうことがあるんです。
彼女たちがどう頑張るのかということに関わってきますが、回ってきたカルテを処理する存在ではなくて、自分から患者さんを集められるような力を持ってほしいなと思います。
実際に平良視能訓練士が行っている眼科では、いずれも患者の数を増やしています。
それは口コミで「あそこにすごい検査員入ったから行こうよ」となったんです。
これは、しっかり検査ができて、アドバイスができる視能訓練士を世の中が欲しているということなんですよね。
彼女たちがもっと活躍する能力と、活躍する場所が必要と考えており、注目度が高まれば必ず賃金は伸びていくはずです。
彼女たちの職種の地位向上に貢献したいというのが、我々の教育プログラムの根幹を成す考え方です。
平良先生のように子どもに詳しい視能訓練士は決して多くはありません。
ですが子どもについての勉強会を開催すると、結構みんな喜んで参加するんですよね。
「私は大人ばかり診ているけど、実は子どもやりたいんです」という欲求も実はあって、ただ職場でやらせてもらってないだけなんです。
―大人と子どもとではどんな違いがあるのですか?
平良:子どもは、まず検査に向き合ってもらう環境を作らないと、やはり大人みたいに最初から「座ってください」「お顔乗せてください」「答えてください」ということができなかったりします。
見えていても「見えない」と答えたり、少しおちゃらけたり。
眼科というよく知らないところに行くわけですから、やはり不安や恐怖とあるわけで、それを取り除いてあげないと、検査や治療に結びつかないんです。
その子の性格や、お話してみての印象などを検査や治療に活かす必要があります。
そういったコミュニケーションの面が大人と子どもの大きな違いだと思います。