Interview
取材動画
北海道札幌市 野本 栄二【取組事例インタビュー】
〈NorthSDGsMediaでは北海道札幌市の企業様のSDGsに関する取り組み事例を紹介しています。〉
【SDGs取組事例】野本栄二【コンサルティング】
エビの頭から出汁を取ったラーメン「えびそば」の元祖創作者である野本様。
産業廃棄物を活用したアイディアを生み出す”ラーメンプロデューサー”野本様へ、再生可能な研究開発についてお話を伺いました。
ーまずは現在の事業内容について教えてください。
野本:今現在は、個人なんですけど、主に飲食店、その中でもラーメン店に特化したコンサルティング業務を中心にやっています。
専門家派遣事業を行っている中小企業庁の未来サポートというところに所属していまして、飲食店やラーメン店の方の新しいメニューの考案や、集客するためにはどうしたら良いのか、ということについて相談に乗っています。
未来サポートからの派遣でなくても、全国どこでも伺っています。コロナの前ですと年間50箇所くらい、九州から津々浦々回ってきました。
―フードロスに取り組まれていると伺ったのですが、その活動内容について教えてください。
野本:30歳の時にラーメン店を開業したのですが、ラーメン店って、豚骨とか鶏ガラとか食べられない部分、つまり産業廃棄物から出汁を取るんですよ。だから持続可能な開発という思想には元々乗っかってると思うんですよね。
1999年に新横浜のラーメン博物館から全国レベルのラーメンコンクールを開くから出品しませんか、とDMが届いて、面白そうだなと思って。そのなかには「今この世の中にないようなラーメンを提案してくれ」と縛りがあったので、自分の母が子どもの頃に作ってくれた甘エビの頭で作った味噌汁が好きだったので、そんなテイストのラーメンができたら面白いだろうなと思ってそれを出品することにしました。
それでエントリーをかけて、344軒の中から準優勝しました。それが日本で初めてのえび出汁ラーメン「えびそば」なんです。
そのエビの出汁をとるのにエビの頭を使ったんですけど、最初はスーパーでお刺身を買ってきて、母と同じように頭を取って、ラーメンスープでコトコト炊いて、エビの感覚がちょっと移ったようなスープができあがったんです。だけど「これをもしお客さんに売るとしたらいくらになっちゃうんだろう?」と思って。一杯6,000円くらい貰わないと合わないんですよ。エビだけを主役にするには圧倒的物量が必要なんです。そうなるとラーメンに合う値段で出すことができないんですよ。
だけど、たまたまスーパーで頭も背中も甲羅も全部取ってあって、しっぽだけがついてるエビのお刺身が並んでるのを見ました。「これ頭はどこにいってるんだろう?」と思って問屋さんに調べてもらったら、「回転寿司のネタを納める加工業者で廃棄されてますよ」「日本全国どこでも捨ててますよ。あれを活かしているところはないです」って話だったんで、「ラーメンコンクールで使いたいので、これを取っといてもらうことできますか?」と業者に直談判しに行きまして。
それで、廃棄されるはずのエビの頭が初めて商品になりました。
今はエビのラーメン屋さんすごく増えました。僕は10年間くらい一人ぽっちで全国でやってたんですけど、10年くらいやるとある程度ブームに変化が起きてくるんですよね。賛同する方が、フォロワーが増えてくるんです。ブランディングのために長崎の北海道物産展に行ったときに、もう全国にエビ出汁ラーメンが広まってるのが分かって。
で、エビの頭の需要と供給のバランスがとうに崩れちゃいまして。僕が使っていた頃は北海道産の甘エビの頭。それしかなかったのに、今は海外からエビの頭が輸入されています。
―頭だけが?
野本:そうです。需要と供給が狂ったんです。もう国内産だけでは間に合わないんですね。なのでそれぐらい捨てられてたものが形として使われるようになって。
これも元々産業廃棄物ですからね。その頃まだSDGsなんて思想もなかったでしょうし。もう20数年前からやってるんですよ。
なおかつ「あら陣」をプロデュースしたときに、「あら陣」は何が名物のラーメン店なのかがないとだめだなと思って、中標津の近隣を回らせてもらったんですよ。何か特産物ないかなって探してるときに尾岱沼(おだいとう)でホッカイシマエビの漁を見させていただいて。そのエビは漁組が一気に買い付けちゃうんですよ。そしてその日のうちにすぐ茹でちゃう。それで茹でたものをサイズ分けしてそのまま急速冷凍かけちゃうんです。それを流通かけているので、産業廃棄物はないんですよ。ただ、茹で釜のなかにはまだ茹で汁がある。それを舐めさせてもらったんですけど、ものすごくエビの旨味が出て出汁になってるんです。じゃあこれを活用できないかなと思って、6トン全部もらってきました。「あら陣」の親会社や釧路水試との協力を経て、これを濃縮してエキス化した調味料を開発しました。
このエキス化したものの最終的な着地点をどこに持っていきたいかというと、僕らは「エビエッセンス」に持っていきたいんですよ。一滴垂らせばどんな食べ物もエビ化してしまう。そんなものができたら、色んなものに添加できるよね。その原料はどこからできてるかっていうと、産業廃棄物からなんですよ。
これも僕のなかではSDGs。再生可能な研究開発につながってるんじゃないかと思ってます。
ーSDGsを意識しなくても「廃棄物を使って何か新しいものに」とか、「これ何かに使えるんじゃない?」っていうひらめきが自然にできるって普通はなかなかないですよね。
そんな野本さんの、活動に対する目的や想いはどのようなものがあるのでしょうか。
野本:実は6年前に病気をしまして、そこから世界観が変わりました。
今まで体を使いすぎたので楽させてやろうと思って、仕事全部やめて、約2年間何もしないでいました。ただ、周りからは「何もしないのも良くないんじゃないか」と言われて、「じゃあ何したらいいと思う?」って聞いたときにこの未来サポートの専門家を勧められたんです。
今までやったことない自分の頭や体の使い方をしてるうちに、「今日も役に立てたな。だったらもう明日持ってかれても(亡くなっても)いいな」って、日々日々お役に立ててることだけでも十分幸せなんですよ。そういう感覚にかわってしまったんです。昔はそんなこと思いませんでしたよ。
それを信念と語れるのかわかりませんけど、「お役に立っているのはいいことなんだな」って思ってるんです。もっとお役に立ちたいなと思ったりもするんです。それが今僕を支えているモチベーションだとも思います。自分の内発動機はそこから出てきてるんだなっていうのがわかるんです。自分のことなんて大して頑張れないんですよ。
―誰かのためだから頑張れるんですね。
野本:そうやって考えて動いてる方が自分のためになってるんですよ。ボケッとして何もしてなかったら体はどんどん弱くなっていくんですけど、誰かのために動いていると自分どんどん元気になっていくのがわかるんです。
まんざら「人のために」って綺麗事を喋ってるわけじゃないんです。自分のためなんです。上(天国)に逝きたいがためなんです(笑)。
―ただそれが結果的に周りを幸せにしてるのであれば素晴らしいことですよね。
行政とも協働して再生可能な研究開発を行う野本様。
野本様のプロデュースを受けたお店は、自然とフードロス削減というSDGsに取り組むような形になっていきます。
飲食店やラーメン店の経営にお困りの方、ぜひ野本様のプロデュースを受けてみてはいかがでしょうか。
あさひフーズ
ラーメンプロデューサー/ミラサポ専門家派遣登録専門家
野本 栄二
札幌市厚別区厚別中央2条5丁目2-1-808
TEL:090-5222-6484
MAIL:ebisoba397@gmail.com