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新世代の太陽電池

新世代の太陽電池

再生可能エネルギーとして知られる太陽光発電。その発電に使われるのが太陽電池です。
一般家庭でも導入可能なため、再生可能エネルギーの中でも最も生活に近いとも言えます。
太陽電池で現在量産されているのは「シリコン系太陽電池」と「化合物系太陽電池」ですが、どちらも大型で設置場所が限られ、製造コストが比較的高いというデメリットがあります。

このデメリットを解消するべく研究が進められているのが、ペロブスカイト型太陽電池。
次世代の太陽電池として世界で注目を集めています。
この記事ではペロブスカイト型太陽電池と従来の太陽電池の違いやメリット、デメリットについてご紹介します。

 

・再生可能エネルギーの定義と太陽光

温室効果ガスを排出させずにエネルギーを生み出すことができるのが再生可能エネルギーです。
政令では太陽光、風力、地熱、水力、太陽熱、大気中の熱その他の自然界の熱、バイオマスが再生可能エネルギーと定義されています。日本はエネルギー資源が少なく、ほとんどを海外に依存しています。そのため、日本のエネルギー自給率は2018年の段階で11.8%と主要国の中でも低い数値です。
再生可能エネルギーは温室効果ガスを排出させない低炭素のエネルギーとしても、国産エネルギーとしても重要な役割を担っていくエネルギーです。

太陽光発電は太陽が指す場所であればどこでも発電が可能なため、再生可能エネルギーの中でも導入しやすいと言えます。建物の屋根や壁など、他の用途では活用しにくい場所を有効活用しての発電が可能なので、新しい土地を必ずしも用意しなければならないというわけではありません。
ただ、曇りや雨など発電量が天候に左右されてしまうので安定した電気を常に供給することが難しいというデメリットもあります。

現在普及している太陽光パネル

・シリコン系太陽電池と化合物系太陽電池

シリコンの半導体に光が当たることで日射強度に比例して発電するのがシリコン系太陽電池、半導体にシリコンを使用せず、他の原料を使用したのが化合物系太陽電池です。
シリコン系太陽電池が最も主流で、発電効率に優れています。化合物系太陽電池は高温時の出力ロスが抑えられ、シリコン系太陽電池より薄型です。
それぞれに細かい種類があり、建物や用途によって使い分けられています。
どちらも壊れにくく変換効率が高いことが評価されていますが、材料や製造コストが比較的高く、さらなる普及のためには新世代の製品開発が期待されています。

 

・ペロブスカイト型太陽電池とは?

ペロブスカイトと呼ばれる結晶構造の材料を原料とした新しい太陽電池で、シリコン系太陽電池や化合物系太陽電池に匹敵する発電効率を達成しています。
従来の太陽電池とは違い、フィルムのように薄く作ることができ曲面に貼れるほどの柔軟性があります。
ペロブスカイト型太陽電池を作るためにはまず原料を含む原液で薄い膜を形成。その後に電気を集める層を塗り重ねていきます。この製造は塗布技術を用いれば大量生産が可能なため、既存の太陽電池よりも安価になると考えられています。
さらに、今までの太陽電池よりもより多くの光を吸収できる性質を持っているため、曇りなどの天候不良時や室内などの低照明度でも発電できるというメリットがあります。

 

・ペロブスカイト型太陽電池の課題

ペロブスカイト型太陽電池の課題は以下の3つです。

  • エネルギー変換効率の不安定さ
  • 耐久性
  • 鉛の使用

シリコン系太陽電池や化合物系太陽電池に匹敵する発電効率を達成しているものの、実用化を考えると、ペロブスカイト型太陽電池はエネルギー変換効率がまだ安定しないと言われています。
エネルギー変換効率が安定しなければ、十分な電力を安定的に生み出す事はできません。
その変換効率の不安定さの原因は、大型化したときに均一な構造を維持することが難しい点にあります。
小さい面積では均一に塗り重ねることができて高い発電効率を達成できますが、大型化したときには均一さが損なわれ発電効率が低くなってしまうのです。

そして、耐久性。
薄型の利点を活かしきるためには高い耐久性が求められます。
実用化と普及のためには様々な物への使用が容易でなければなりません。
ペロブスカイト型太陽電池の耐久性の鍵を握るのは高温による劣化と、湿度による劣化の2つです。
有機材料を使用するため高温に弱く、空気や湿気による劣化も進みやすいと言われています。
つまり、使われている原料が高温や湿気に対して相性がいいとは言えないのです。
これを打開するために原因となっている物質を他の物質に置き換えて、研究が進められています。

また、現在研究が進んでいるペロブスカイト型太陽電池の多くには鉛が使用されています。
鉛は酸性雨によって溶かされ、地表へ流れていきます。
流された鉛の成分は地下水に入り込み、河川や土壌を汚染していきます。やがて汚染された河川や土壌から農産物や家畜へ取り込まれ、最終的には私たち人間の体に入ってきて蓄積されていきます。
人体に蓄積された鉛が与える影響は特に胎児への影響が大きいと言われています。神経障害、知能低下、成長障害などの重たい症状を引き起こします。
環境に配慮した太陽電池に、毒性のある鉛を使用することはデメリットであるとして頻繁に問題に挙げられます。
この課題を解決するため、鉛を使用しないペロブスカイト型太陽電池の開発が日々進められています。

 

・ペロブスカイト型太陽電池の展望

このペロブスカイト型太陽電池が実用化されることによる様々な展開に期待が寄せられています。
例えば衣類などコンパクトに収納するものに張り付けて簡単に電気を生み出す事も可能になります。
ペロブスカイト型太陽電池が搭載されたテントが開発されれば、災害時でも非難した人達それぞれで発電することが可能になり、暖をとることも容易になります。
また、車に搭載すれば運転しながら発電が可能になります。普及が進む電気自動車は充電が必要ですが、そこに自分で発電しながら走る車が誕生すれば、ガソリン車廃止などの動きもある脱炭素化に向けての大きな一歩になり得ます。

ガソリン車廃止の動きについてはこちらの記事をご覧ください。
ガソリン車廃止の時代へ-脱炭素化のために-

防災バッグ電気自動車

これは「エネルギーハーベスト」の実現に一歩近づくことになります。
エネルギーハーベストとは環境発電技術とも言います。
太陽光や照明光、機械が出す振動、熱などのエネルギーを利用して電力を生み出す技術のことです。特に重要視されているのは、身の回りにあるわずかなエネルギーを電力に変換して活用していくことです。
再生可能エネルギーとも似た言葉ですが、エネルギーハーベストは大型の発電ではなく、小型電子機器の独立型電源となるような規模の小さい発電技術です。

現在はある程度の太陽光がないと発電が難しい太陽電池。
それが技術開発によってわずかな光も無駄にしない仕組みへと向かおうとしています。
ペロブスカイト型太陽電池が普及していけば、今まで太陽光発電を導入していなかった家庭や中小企業の動きも変わっていくのではないでしょうか。

今までの太陽光発電よりも安価で、場所も選ばず、わずかな光も電気に変換できる。
ペロブスカイト型太陽電池には多くの期待がかかります。
課題解決に向けた研究の行方と実用化・普及が待ち遠しいですね。

 

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